
住宅のリノベーションで使えるローンとは?メリット・デメリットや選び方を解説

住宅のリノベーションをしたいものの、どんなローンがあるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。工事内容によっては、多額の費用がかかるケースもあるため、事前に活用できるローンの種類を理解しておくと安心です。本記事では、リノベーションで活用できるローンの種類とメリット・デメリット、注意点などを解説します。
住宅のリノベーションをしたいと思っているものの、どんなローンがあるのか分からないという方も多いのではないでしょうか。リノベーション費用は、決して安くありません。そのため、事前に活用できるローンの種類や特徴をきちんと理解しておくことが大切です。
本記事では、これからローンを組んで住宅のリノベーションをしたいという方に向けて、リノベーションで活用できるローンの種類とメリット・デメリット、注意点などを解説します。慎重に資金計画を立て、納得のいく形でリノベーションするために、本記事を参考にしてみてください。
リノベーションで使えるローンの種類とメリット・デメリット
リノベーションで使えるローンには、主に住宅ローンとリフォーム(リノベーション)ローンがあります。適切にローンを組めるように、ここではそれぞれの種類ごとの特徴やメリット・デメリットについて解説します。
住宅ローン
住宅ローンとは、住宅の購入費用を対象としたローンのことですが、物件購入費用とあわせてリノベーション費用を借り入れる際にも利用できる場合があります。住宅ローンは、金融機関が取り扱う「民間ローン」と、住宅金融支援機構のフラット35や財形住宅融資などの「公的ローン」に大別できます。
リフォームローンと比較したときの、住宅ローンの主なメリット・デメリットを以下にまとめました。
メリット:
・金利が安い
・借入期間が長い
・借入可能額が多い
・変動/固定金利から選べることが多い
デメリット:
・審査に時間がかかる
・物件を購入しない場合は利用できない
住宅ローンは、自宅や土地に抵当権を設定することになるため、リフォームローンに比べて金利が安く、借入期間が長い点が特徴です。金融機関にもよりますが、リフォームローンの金利は2~4%が平均であることに対して、住宅ローンの金利は1%以下が多くなっています。
そして、借入可能額がリフォームローンより多い点もメリットといえます。リフォームローンの借入可能額は500万~1,000万円ほどであるのに対して、住宅ローンの借入可能額は500万~1億円ほどです。
さらにリフォームローンの場合は変動金利が多い傾向がありますが、住宅ローンでは変動・固定金利から選べます。
一方で、住宅ローンの場合は審査に時間がかかることが一般的です。通常は2~3週間、最大1.5ヶ月ほどかかります。また、住宅ローンの対象は物件購入費用です。そのため、物件を購入するときにリノベーション費用も一緒に借り入れる場合でしか利用できません。
リフォーム(リノベーション)ローン
リフォームローンとは、住宅のリフォームやリノベーションを目的としたローンのことです。
住宅ローンと比較した場合のリフォームローンのメリット・デメリットは以下のとおりです。
メリット:
・借入額や借入期間によっては担保が不要
・比較的審査にかかる時間が短い
デメリット:
・金利が高め
・借入期間の上限も比較的短い
・住宅の購入資金に活用できない
リフォームローンには借入額や借入期間などによって無担保型と有担保型の2種類があり、多くの場合で無担保型が採用されています。ちなみに、有担保型のほうが借入可能額が高く、借入可能期間が長く設定されていることが一般的です。
無担保型を選択した場合、住宅ローンと異なり担保がなくても借入れできる点はメリットといえるでしょう。また、無担保型のリフォームローンの場合は審査にかかる時間が短いといわれます。
一方で、リフォームローンでは金利の平均が2~4%と住宅ローンより高く設定されることが多い点や、借入期間の上限が最長15年と比較的短くなります。また、リフォームやリノベーション専用のローンであるため、住宅ローンの購入資金のために利用できない点には注意が必要です。
どのリフォームローンが良いかを選ぶ際は以下の点も確認しておくとよいでしょう。
- 保証料の支払いの可否(ローン返済が難しくなった場合に契約者に代わり返済してくれる保証会社に対して払う費用)
- 団体信用生命保険の加入の有無(契約者の死亡時・高度障害状態になったときに保険金からローン残債が支払われるもの)
住宅ローンとリフォームローンのそれぞれのパターン
住宅ローンとリフォームローンの特徴を把握したところで、実際にそれぞれ活用できるパターンを確認しておきましょう。
住宅ローンの活用パターン
・住宅購入時にリノベーション費用も含めて住宅ローンを組む
・現在契約中の住宅ローンを借り換えてリノベーション費用も含める
リフォームローンの活用パターン
・持ち家の住宅ローンの借入中や完済後に、リノベーション費用として新たにリフォームローンを組んで借り入れる
住宅ローンは、住宅の購入費用が対象となります。そのため、住宅ローンを活用するパターンとして、中古物件を購入するときにリノベーション費用をあわせて借り入れる方法が一般的です。また、所有している持ち家のローンを返済している途中であれば、現在組んでいる住宅ローンの残債を他の金融機関に借り換え、リノベーション費用を含めて借りる選択肢もあります。
他方、リフォームローンは、リフォーム・リノベーションにかかる費用を対象とした専用のローンです。そのため、リノベーションを目的としてリフォームローンを組むためには、住宅ローンとは別にリノベーション費用のためにリフォームローンを組むことになります。
住宅ローンとリフォームローンのおすすめの選び方
リノベーションをするためにローンを組むなら、前述した住宅ローンとリフォームローンのメリット・デメリットを踏まえて、自身のケースに合わせて検討することが重要です。
ここでは、住宅ローンとリフォームローンそれぞれの具体的な選び方について解説します。
大がかりなリノベーションなら「住宅ローン」
前述のとおり、住宅ローンはリフォームローンに比べて借入額が多く、借入期間が長い点が特徴にあげられます。金融機関によっては600万円以上などとして金額が設定されているケースもあり、少額の借入れができない場合もあるようです。そのため、リノベーションの中でも大きな工事になり、高額な費用が必要になる場合には、住宅ローンを検討することが適しています。
ただし、借入時には主に以下のような諸費用がかかることがあります。この諸費用だけで数十万円ほどかかることもあるため、資金計画を立てる際に考慮することが重要です。
- 事務取扱手数料
- 保証料・保証事務取扱手数料
- 印紙税
- 抵当権設定登録免許税
- 司法書士への報酬
- 団体信用生命保険料
- 火災保険料
部分的なリノベーションや借入額が少ない場合は「リフォームローン」
一方で、リフォームローンは、一般的には住宅ローンと比べて借入額や借入期間が短く設定されているため、部分リノベーションなど借入額が少ない場合に活用することが適しています。
リノベーションには、建物全体を改修し、構造や間取り、設備などをすべて一新するフルリノベーションと、家の一部のみを改修する部分リノベーションに大別することが可能です。部分リノベーションにかかる費用は、工事内容などによりますが、数十万円から数百万円で済むケースもあります。
ちなみに、リフォームローンの場合、一般的に少額でも借入れができ、借入時の手数料がかかりません。ただし、前述のとおり住宅ローンより金利が高く、借入期間が短い点に考慮する必要があります。
リノベーションするために活用できる主な減税制度・補助金
住宅のリノベーションにかかる費用は決して安くありません。工事内容や条件によりますが、ローンを組む際に減税制度が適用される場合があります。
ここでは、リノベーションでローンを組む際に活用できる減税制度を紹介します。
住宅ローン減税
住宅ローンを組んでリノベーション物件を購入する場合は、住宅ローン減税を受けられる可能性があります。住宅ローン減税は住宅の取得を支援し、促進を図ることを目的としており、住宅ローンの年末のローン残高について、最大13年間0.7%が所得税から控除される制度のことです。
新築住宅だけでなく、中古住宅を購入する場合にも適用されます。そして、より性能が高い住宅を購入すれば、最大控除額が大きくなる仕組みが特徴です。
なお、適用されるためには、ローンの返済期間が10年以上あることなど条件があるため、事前に確認しておきましょう。
新築住宅
借入限度額(令和6・7年入居) | 控除率 | 控除期間 | 床面積要件 | |
認定住宅 | 4,500万円子育て世帯・若者夫婦世帯:5,000万円 | 0.7% | 13年 | 50m2 |
ZEH水準省エネ住宅 | 3,500万円子育て世帯・若者夫婦世帯:4,500万円 | 0.7% | 13年 | 50m2 |
省エネ基準適合住宅 | 3,000万円子育て世帯・若者夫婦世帯:4,000万円 | 0.7% | 13年 | 50m2 |
一般住宅 | 0円* | 0.7% | 10年 | 50m2 |
*令和5年末までに新築の建築確認を受けた住宅に令和6・7年に入居する場合は借入限度額2,000万円・控除期間10年
中古住宅
借入限度額 | 控除率 | 控除期間 | 床面積要件 | |
認定住宅ZEH水準省エネ住宅省エネ基準適合住宅 | 3,000万円 | 0.7% | 10年 | 50m2 |
一般住宅 | 2,000万円 | 0.7% | 10年 | 50m2 |
引用元:国土交通省「住宅ローン減税」
先進的窓リノベ事業
一定の条件に該当する既存住宅において、窓(ガラス)を交換(断熱改修)するリフォーム工事を実施することで、先進的窓リノベ事業による補助金を活用できる可能性があります。
補助の対象となるのは、以下の要件を満たす人です。
- 窓リノベ事業者と工事請負契約を締結し、窓のリフォーム工事をすること
- 窓のリフォーム工事をする住宅の所有者等であること
主な対象工事と補助金額は以下のとおりです。
ガラス交換(ガラス1枚あたりの補助額) | 5,000~55,000円(戸建て・低中高層集合住宅) |
内窓設置(1製品あたりの補助額) | 12,000~106,000円(戸建て・低中高層集合住宅) |
外窓交換(カバー工法・1製品あたりの補助額) | 58,000~220,000円(戸建て・低層集合住宅)62,000~266,000円(中高層集合住宅) |
外窓交換(はつり工法・1製品あたりの補助額) | 46,000~183,000円(戸建て・低層集合住宅)62,000~266,000円(中高層集合住宅) |
その他、対象工事と補助金額に関する詳しい情報については、各自治体などに問い合わせることをおすすめします。
参照:環境省「先進的窓リノベ2025事業」
給湯省エネ事業
リノベーションにおいて、給湯省エネ事業の補助金交付を受けられる場合があります。給湯省エネ事業は、新築(注文住宅・分譲住宅)・中古住宅に高効率給湯器を設置する事業において、補助金が支給されるというものです。
対象工事と補助金額は以下のとおりです。
ヒートポンプ給湯器(エコキュート) | 6万円/1台 |
電気ヒートポンプ:ガス瞬間式併用型給湯器(ハイブリッド給湯器) | 8万円/1台 |
家庭用燃料電池(エネファーム) | 16万円/1台 |
参照:経済産業省資源エネルギー庁「給湯省エネ2025事業」
リノベーションでローンを組むまでの主な流れ
スムーズにリノベーションを実施するために、ローンの一般的な流れをおさえておくことが大切です。
金融機関によって手続きの流れが異なる場合がありますが、リフォームローン手続きの主な流れは以下のとおりです。
1.リノベーションプランの決定
2.仮審査の申込み
3.審査結果連絡
4.本審査申込み
5.審査結果連絡と契約
仮審査の申込みでは、主に以下の情報が必要です。最近ではインターネットから申し込めるケースもあります。
- 申込者情報(氏名・住所・性別・生年月日など)
- 勤務先情報(会社名・資本金・従業員数・在籍年数など)
- 借入希望金額
- 借入期間
- リノベーションにかかる費用と自己資金額
リノベーションをする前に確認しておくべき注意点
リノベーションは、単なる修理や改装ではありません。そのため、リノベーションを実施する際は、予算と希望の住まいとの兼ね合いを考慮して、慎重に計画を立てることが重要です。
リノベーションを実施する際、主に以下のようなポイントに注意しましょう。
- 機能性や利便性も重視する
- 設計費や諸費用も考慮して予算を組む
- 耐震性や断熱性の向上を図る改修を行う場合には法的な規制を確認する
リノベーションというと、デザイン性の高さだけに着目されがちですが、生活導線や収納スペースなど、日常の使いやすさや機能性も重視することが大切です。また、リノベーション費用は決して安くありません。工事費だけでなく、設計費や諸費用も考慮して、慎重に予算を組む必要があります。
そして、リノベーションする建物の構造や用途によっては、リノベーションに関する法的な規制を確認しなければなりません。特に耐震性や断熱性の向上などの改修を行う際は、建築基準法などの法律に準拠する必要があります。法的な規制については、リノベーション会社などに確認しておくと安心です。
まとめ
本記事では、リノベーションするのに活用できる「住宅ローン」と「リフォームローン」の、それぞれのメリット・デメリット、注意点などを解説しました。
リノベーション内容によっては多額の費用が発生します。そのため、安心して実施するためには、ローンの種類ごとの適切な活用方法、注意点などを確認しておくことが大切です。リノベーションによって自分が希望する住まいを実現するために、本記事を参考にして慎重に資金計画を立てましょう。