
中古住宅を購入してリノベーションする場合の費用相場は?安く抑える方法も解説

中古住宅を購入してリノベーションしようと考えているものの、費用相場がわからず決断できずにいる方も多いのではないでしょうか。新築物件を購入するより費用を抑えられるメリットがありますが、中古住宅を購入後にリノベーションする際にかかる費用は決して安くはありません。予算内に費用を抑えるためには、リノベーションにかかる費用相場を把握したうえで、いくつかポイントを理解しておくことが重要です。
本記事では、中古住宅をリノベーションする際の費用相場や費用を安く抑えるポイントなどを解説します。
中古住宅を購入してリノベーションする場合の費用相場
希望の住まいを実現するための選択肢として、中古住宅を購入してからリノベーションする方法が注目を集めています。
主に以下のようなメリットがあります。
- 新築購入するより費用を抑えられる
- 自分好みのデザインや間取りにできる
- 物件が豊富にあり立地の良い場所を選びやすい
- 日当たりや周辺環境を事前に確認できる
一方でデメリットも確認しておくことが大切です。
- 構造部分の老朽化に気づきにくい
- 住宅ローンの審査が厳しい傾向がある
- 住宅の状況によってはすぐにメンテナンスが必要なケースもある
中古住宅を購入してからリノベーションする場合は、こうした特徴を理解したうえで、物件価格とリノベーション費用を確認して慎重に資金計画を立てる必要があります。
物件の広さや築年数、工事内容などによって費用は大きく異なりますが、2~3LDKの一戸建をフルリノベーションした場合の費用相場、600万~1,000万です。ただし、施工内容によっては500万円以内に収まる場合や、1,500万~3,000万円を超えるケースもあります。
ちなみに、中古住宅を購入してリノベーションしたケースでの、物件購入価格の相場は一戸建てで3,200万円、マンションで3,000万円です。
中古住宅の種類別にリノベーションの平均価格を比較すると、一戸建ての場合で約700万円、マンションだと約500万円と、一戸建てのほうが高い傾向があります。
【予算別】中古住宅を購入してリノベーションしたときの工事内容
予算の範囲内で工事を実施するためには、施工箇所ごとの費用相場も確認しておくことをおすすめします。ただし、前述のとおり、中古住宅をリノベーションする際の費用は物件の広さや築年数、施工箇所などによって異なります。あくまで費用の目安であることをおさえておきましょう。
ここでは、予算別にリノベーションできる工事内容を紹介します。
300万円以内
予算が300万円以内の場合、実施できる主な工事内容と費用相場は以下のとおりです。
- クロスの張り替え:5~10万円
- 床リフォーム:~10万円
- キッチン:50万~100万円(壁付きキッチンを対面式に変更:55万~200万円)
- トイレ:15万~60万円
- 洗面台:10万~50万円
- 浴室:60万~120万円
予算300万円以内であれば、クロスの張り替えや水回りの設備などのリノベーションを実施できるでしょう。
500万円以内
予算が500万円以内の場合、前述した300万円までに実施できる工事内容に加え、外装工事や一部の間取り変更などを実施できるようになります。
- 外壁(塗装):50万~180万円
- 一部の間取り変更(間仕切りやドアの撤去):7万~25万円
- 一部の間取り変更(間仕切りやドアの追加):8万~35万円
外壁に関しては、カバー工法の場合は100万~200万円、張り替えだと130万~230万円ほどが相場です。
800万円以内
予算が800万円ほどあれば、大幅な間取り変更や耐震工事などを検討できます。
- 間取り変更:100万~350万円
- 耐震工事:25万~200万円
- 一部の耐熱性能を向上させる工事(内窓設置1か所):8万~15万円
- 断熱リフォーム:20万~120万円
1,000万円以内
予算1,000万円となると、間取り変更や耐震工事、断熱リフォームなどの他、バリアフリー工事も実施できます。
- バリアフリー工事:100万~300万円
- バリアフリー工事(手すりの設置・段差の解消など):~33万円
1,500万円以内
予算が1,500万円ほどになると、基礎部分の補修工事を実施できる可能性があります。耐震性を大幅に高められるケースもあるため、長期的に居住したい方に適しています。
また、住宅の構造部以外をすべて取り替えるスケルトン工事も検討できるでしょう。
- 基礎工事(軽量鉄骨・鉄筋コンクリート):11万~13万円(1坪)
- スケルトン工事:1,000万円~
リノベーション費用に影響を与える要素
リノベーション費用には、人件費や資材・設備費用、デザイン・設計費用などのさまざまな費用が含まれます。納得してリノベーションを実施するためには、費用に含まれる項目を理解したうえで、費用が変動する要因をおさえておくことが大切です。
リノベーション費用を左右する要素には、主に以下があげられます。
- 築年数・リノベーション範囲
- 設備の仕上げやグレード
住宅の築年数や状態によって、リノベーション範囲は変わります。そして、施工範囲によって、作業時間や作業量が変わるため、資材費や人件費が変動することが一般的です。
築年数が古い場合は、新耐震基準を満たしているかどうかも確認しましょう。日本の耐震基準は1981年に見直されており、新耐震基準で建築された建物の場合、震度6~7程度の地震でも倒壊しないように計算されています。反対に、築年数が古い住宅の場合は旧耐震基準の頃に建築確認を受けている可能性があるため、耐震性を確認する必要があります。
また、設備の仕上げやグレードによっても、リノベーション費用は変わります。そのため、リノベーションを依頼する場合は、施工範囲だけでなく、どのように仕上げたいのかを明確にすることが大切です。予算をオーバーしそうな場合は、仕上げのグレードを検討する必要があるかもしれません。
想定外の補修工事により費用が高くなるケースもあります。中古住宅を購入する前に、専門家に相談して住まいの状態を診断してもらうと安心です。
リノベーション費用を安く抑えるポイント
リノベーションにかかる費用は、決して安くありません。前述したように、リノベーション費用に影響を与える要素をおさえておくことで、無理のないリノベーション計画を立てられます。
さらに、予算の範囲内で理想の住まいを実現するために、費用を安く抑えるポイントについてもおさえておきましょう。
住宅ローンとリフォームローンの違いを理解しておく
費用を抑えるためには、まず自己資金でどのような工事を実施できるのかを検討したうえで、資金を借り入れる場合は住宅ローンとリフォームローンの違いを理解しておくことが大切です。金利や借入額・期間などを含めて検討して、予算に見合うリノベーションを実施しましょう。
リノベーション費用の支払いのためにローンを組む方法として、住宅ローンとリフォームローンがあります。住宅ローンは住宅の購入を目的として借り入れるローンです。一方、リフォームローンとは、リフォーム(リノベーション)専用のローンのことです。
住宅ローンは、リフォームローンと比較すると、金利が低く、借入可能額が高い傾向があります。また、借入可能期間においても、住宅ローンは最長35年、リフォームローンは最長15年となり、住宅ローンのほうが長いことが特徴です。
ちなみに、住宅ローンは物件購入費用を借り入れることを目的としたローンであることから、物件購入時に、物件費用に加えてリノベーション費用を借り入れるケースが一般的です。その他、現在契約中の住宅ローンを乗り換えてリノベーション費用も含めて借りる方法もあります。
なお、最近では、リノベーション費用を貯蓄などの自己資金から捻出するケースが増えているようです。自身に合う適切な手段で資金を捻出しましょう。
築年数が浅い中古住宅を選ぶ
費用を安く抑えるためには、住宅の状態が比較的良好な築年数が浅い中古住宅を選ぶことをおすすめします。築浅の住宅であれば、耐震工事や断熱工事などをしなくて済むケースが多いためです。
耐震工事や断熱工事を実施するとなると、住宅の基礎部分や建材の見直しが必要となるため、リノベーション費用が高額になるケースもあります。
住宅ローン減税や補助金を活用する
住宅ローン減税や補助金を活用することで、費用を抑えられるケースもあります。
住宅ローン減税とは、無理のない負担で居住ニーズを促進することを目的とした減税制度のことです。住宅ローンを組んで住宅を取得・増改築する際、年末のローン残債に0.7%を乗じた額を所得税から10年間(新築住宅の場合、最大13年間)控除できるようになります。ただし、合計所得金額が2,000万円以下などの要件があるため、適用内容を確認しておくことをおすすめします。
そのほか、省エネルギーや耐震などを目的としたリフォーム・リノベーションについては、補助金の対象となる可能性があります。
例えば、先進窓リノベ2025事業は、既存住宅において開口部の断熱改修を実施する場合に補助金を受けられるという制度です。一戸あたり200万円が補助金の上限とされています。補助金が支給される詳しい工事内容や補助額については、公式ホームページなどで確認しておきましょう。
必要以上に大きな物件を選ばない
リノベーション費用を抑えるポイントとして、中古物件を購入する際、自身のライフスタイルや居住する家族の人数に合う適切な物件を選ぶこともあげられます。
国土交通省では、世帯人数に応じて、「健康で文化的な住生活の基礎として必要不可欠な住宅の面積に関する水準」と、「豊かな住生活の実現を前提として、多様なライフスタイルを想定した場合に必要と考えられる住宅の面積に関する水準」を定めています。
世帯人数 | 健康で文化的な住生活の基礎として必要な面積 | 都心とその周辺での共同住宅居住を想定した場合の住宅の理想の面積 | 郊外や都市部以外での戸建て住宅居住を想定した場合の住宅の理想の面積 |
単身 | 25 | 40 | 55 |
2人 | 30 | 55 | 75 |
3人 | 40 | 75 | 100 |
4人 | 50 | 95 | 125 |
単位:m2
引用元:国土交通省「住生活基本計画における「水準」について」を加工して作成
上記の世帯人数別の面積を参考にしたうえで、自分のライフスタイルに合わせて適切な広さの物件を選ぶことをおすすめします。
設備のグレードを検討する
リノベーションで設備を導入する場合は、予算内に収まるように必要以上に高いグレードのものを選ぶのではなく、グレードが低くてもシンプルで使いやすい設備を選びましょう。
グレードが高いものを選ぶ場合は、デザインや機能に関してどこまでこだわるのかを検討する必要があります。グレードを検討する際、抑える部分と優先したい部分とを明確に決め、優先したい事柄が複数ある場合は優先順位をつけましょう。
業者に、全体の予算イメージを伝え、予算をオーバーする場合は、優先順位の低いものから調整していくことが大切です。
水まわりの位置は変えずに設備や内装を変更する
リノベーション費用をできるだけ抑えたい場合は、キッチンや浴室など水回りの位置をなるべく変えない形でリノベーションすることをおすすめします。水回りの位置を移動させるとなると、給排水管やガス管、排気ダクトなどを移動させる必要があるためです。手間がかかり、業者のスキルが必要となるため、費用が高くなる可能性があります。
DIYの実施も検討する
DIYを得意とする方であれば、部分的に自分でリノベーションする方法もあります。例えば、クロスの張り替えや壁の塗装などは、DIYに慣れている方であれば、比較的取り組みやすいといえるでしょう。
一部屋だけ、また部屋の一部分だけでも自分で施工することで、リノベーション費用を抑えられる可能性があります。
中古住宅を購入してリノベーションする場合の注意点
中古住宅を購入してからリノベーションするには、いくつか守るべき注意点があります。リノベーションしてから後悔しないためにも、ここで紹介する注意点をおさえて慎重に検討することが大切です。
相見積もりを取得する
安心してリノベーションを実施するためには、施工内容と費用相場を把握しておくことが大切です。複数社から相見積もりを取得して、適正価格を把握することで、相場からかけ離れたリノベーション費用を提示してくる業者を避けられます。
予算や施工内容の優先順位、デザインに関することなど希望を伝え、複数社の見積書を比較して、費用や施工内容の適正さを見極めましょう。
物件の安さだけで決めない
安さだけで物件を選ぶと、後々、予想外のリノベーションやメンテナンス費用が必要になるおそれがあります。実際に、物件購入時には問題なさそうに見えた給湯器の設備が入居して間もなく故障してしまった例もあるようです。また、築年数が経過している物件の場合、断熱性や防音性が低い可能性もあります。
リノベーションしてすぐに修繕・補修費が発生するリスクを避けるためにも、物件を購入する際は、住宅の状況や設備の状態などをきちんと確認する必要があります。
新耐震基準に適合している物件を選ぶ
購入予定の中古物件の耐震性を十分に確認することが重要です。
前述のとおり、1981年に日本の耐震基準が大幅に改定されました。新耐震基準によって建築されていれば耐震性の向上が期待されます。反対に、旧耐震基準で建てられた建物の場合、耐震性・防音性・断熱性が不十分な可能性があり、場合によってはリフォームに高額な費用が必要となるケースもあるでしょう。
ホームインスペクションを実施する
ホームインスペクションは住宅診断とも呼ばれ、建築や不動産に関する専門的な知識のある第三者によって、建物の性能や劣化状況などを判断してもらうことです。
事前に専門的な観点から住宅の状況を調査してもらい、希望するリフォームの適正性や、必要な補修工事などを助言してもらえます。後になって追加の補修工事が必要になる事態を避けられるでしょう。
一般的に、ホームインスペクションにかかる費用は5万~10万円ほどです。
なるべく間取りを変更せずに済む物件を選ぶ
適切にリノベーションを実施するためには、事前に中古住宅を内見して、生活導線を考え、できる限り間取り変更せずに済む物件を選ぶことをおすすめします。物件によっては、間取りを自由に変更できない可能性があるためです。
また、前述のとおり、水回りの位置を変更する場合は、施工費用が高額になるケースもあるでしょう。慎重に物件を選ぶことで、そうしたリスクの発生を避けることにつながります。
マンションの場合はリノベーションできない共有部がある
マンションをリノベーションする場合は、工事を実施できない共有部があることを理解しておく必要があります。
室内でも、以下のような箇所は共有部にあたることが一般的です。
- 玄関の扉
- 天井・躯体壁
- バルコニー
- サッシ
そのほか、パイプスペースという区画も共有部にあたり、リノベーションできません。また、壁式構造という建物の構造によっては専有部の中に耐力壁という壊せない壁があり、自由に間取り変更できないケースもあります。マンションをリノベーションする際は、建物の構造についても確認することが大切です。
中古住宅を購入してリノベーションする場合の流れ
中古住宅をリノベーションする際は、事前にリノベーションの流れをおさえておくことが大切です。
中古住宅をリノベーションする一般的な流れは以下のとおりです。
1.中古物件を探す
2.中古物件の購入(不動産売買契約)
3.リノベーションの手続き(業者選び・プランニング・現地調査・工事請負契約など)
4.リノベーション工事・引き渡し
住宅ローンを組んで購入する場合は、購入申し込みの時点で事前審査を受けておく必要があります。そして、不動産売買契約後に本審査を申し込みます。住宅ローンの契約が終わると、物件の引き渡しとなります。
物件を購入したら、リノベーションの手続きに進みます。リノベーション内容を考慮して物件を選びたい場合は、リノベーションの手続きと物件の購入を並行して進めることも可能です。
リノベーションの手続きの中で、見積書を取得するために欠かせないのが、現地調査です。リノベーション業者が現場に行き、希望の工事を実施できるかどうかを調査することを指します。
現地調査が終わり見積書が作成され、金額や施工内容に納得したら、リノベーション業者と工事請負契約を締結します。なお、リフォームローンを組む場合は、リノベーションの工事請負契約を締結するときにローンの申し込みと契約を行うことが一般的です。
中古住宅を購入後にフルリノベーションした事例
【Before】
【After】
最後に、築28年の中古住宅を購入後、リノベーションした事例を紹介します。
紹介する事例では、3LDKの室内をスケルトン状態にして、生活導線を考えて水回りをまとめました。ライフスタイルの変化に対して柔軟に対応できるように、自由に間取り変更ができるようにプランを作成しています。リノベーションを実施したことで、室内の奥まで光が届くようになりました。
中古住宅を購入してからリノベーションを実施する場合は、家族構成やライフスタイルの変化を考慮して計画を立てることも大切です。
まとめ
本記事では、中古住宅をリノベーションするためにかかる費用について解説しました。新築物件を購入するより、費用を抑えて理想の住まいを実現できるとして注目を集めています。しかし、中古物件購入後にリノベーションするとしても、その費用は決して安くありません。
予算内に費用を抑えて安心してリノベーションを実施するためには、いくつかポイントがあります。リノベーションにかかる費用相場を把握したうえで、施工範囲や仕上げのグレードを慎重に検討することが大切です。そして、物件やリノベーション費用の安さだけに着目するのではなく、購入する中古物件の状況を事前にきちんと確認しておく必要があります。
ぜひ、本記事を参考に中古住宅のリノベーションを実施して、理想の暮らしを実現してみてはいかがでしょうか。