古民家リノベーションの費用相場は?施工事例や補助金制度も紹介
近年、古き良き日本家屋の良さを味わえる古民家リノベーションに注目が集まっています。古民家での生活に憧れる方は多いですが、古民家を現代の生活に合わせて改修するには、一体いくらくらいの費用がかかるのでしょうか。
今回は古民家リノベーションの工事内容ごとの費用相場やコストを抑えるポイントを解説します。古民家リノベーションに活用できる補助金制度も紹介するので、ぜひ参考にしてください。
古民家リノベーションは4種類ある
古民家とは、日本の伝統的な工法で建てられた住まいのうち、築年数がかなり経過した民家を指します。明確な定義はないものの、一般的には築50年以上経つ木造家屋が古民家として扱われています。
古民家リノベーションの方法は、以下の4種類に分けられます。
リノベーションの種類 | 概要 |
一般的なリノベーション | ・比較的保存状態の良い古民家に実施される方法・柱や梁など住まいの構造部分には手を加えない・水回り設備の交換や床・屋根・外壁の補修を中心に行う |
半解体再生リノベーション | ・古民家の味わいを残しつつ建物を補強する方法・骨組みの状態まで解体し、柱や基礎を部分的に補強してから改修する・スケルトン解体リフォームともいわれる |
全解体再生リノベーション | ・骨組みを含め古民家を一度全解体し、部材をを再利用して立て直す方法・古民家の温もりを残した状態でリノベーションできる・傷んだ部材は交換し、耐震性の高い部材の新たに使用する |
移築再生リノベーション | ・古民家を解体したりクレーンで持ち上げて運搬したりして建てる場所を変更する方法・好きな土地に気に入った古民家を建てられる |
どの方法でリノベーションを実施するかは、古民家の状態や土地の条件によって決まります。
古民家リノベーションの費用相場
古民家リノベーションの費用は、建物の状態や施工範囲に応じて変わるため、相場が幅広い点が特徴です。最低限のリノベーションであれば数百万円円でできますし、とことんこだわるのであれば何千万円もかかります。
施工内容別の費用相場を見ていきましょう。
最低限のリフォーム:300~500万円
構造部分には手を加えず、水回りの交換や内外装の補修を中心に行う場合、費用相場は300~500万円ほどです。部分的な改修なので、リノベーションというよりもリフォームに近いといえるかもしれません。
古民家の状態がとても良いのであれば最低限のリフォームで済みますが、柱や梁が劣化している場合は補修が必要です。古民家専門の耐震診断を行う団体もあるので、構造がどの程度劣化しているか調べてもらうと良いでしょう。
一通りのリノベーション:1,500~2,000万円
水回り設備の交換や耐震補強、断熱化工事など、一通りのリノベーションを行う場合の費用相場は、およそ1,500~2,000万円ほどです。この価格帯を目安として、機能を足したり既存設備を流用したりして予算に合わせた工事を行っていきます。
例えば、屋根をすべて葺き替えようとすると500万円以上かかりますが、瓦の一部補修だけにすればその分費用を抑えられます。どこまで活用できるか、どこから補修が必要か、専門家に相談しましょう。
こだわりのリノベーション:2,000万円~
設備や機能など、随所にこだわりを盛り込んだ場合、費用は2,000万円以上かかります。また、広くて大きな古民家はその分施工範囲も増えるので、それに応じて金額も高くなるでしょう。
例えば、一度すべて解体して徹底的に直していくのであれば5000万円以上かかりますし、大きな古民家の外壁をすべて漆喰でやり直すようなケースでも数千万円の予算が必要です。また空き家の期間が長く、雨漏りしているような状態の悪い古民家だと、快適に住めるところまで直すのに2,000万円以上かかるでしょう。
古民家リノベーションにかかる費用の内訳
先ほど触れたように、古民家リノベーションは施工範囲や工事内容(建物の状態)によって総額が変わります。
それを踏まえ、古民家リノベーションで行う頻度の高い工事を以下にまとめました。
- 耐震補強工事
- 断熱化工事
- 水回りの改修工事
- バリアフリー化工事
上記の工事内容や費用相場を見ていきましょう。
耐震補強費用
耐震補強は、建物の基礎部分である土台や柱、梁、壁を補強する工事を指します。耐震補強は耐震改修工事のうちの1つで、耐震改修の他の工事には制震補強、免震補強があります。
古民家における耐震補強工事の費用相場は以下の通りです。
工事内容 | 費用相場 |
耐震改修(トータル) | 150~300万円 |
壁の耐震補強 | 9~15万円/箇所 |
柱の耐震補強 | 接続金具の設置:5~20万円柱の交換:100~150万円 |
屋根の耐震補強 | 5,000~7,000円/㎡ |
劣化が進んでいる古民家は大がかりな補強工事が必要となるため。その分費用が上がります。
断熱リフォーム費用
古民家は断熱性能が低いため、天井や床、壁への断熱材の施工が必要です。古民家の断熱工事の費用相場を以下にまとめました。
工事内容 | 費用相場 |
窓の断熱工事 | 樹脂サッシへの交換:5万円程度内窓の設置:5~10万円断熱ガラスに交換:5〜15万円 |
床の断熱工事 | 4,000~8,000円/㎡ |
天井の断熱工事 | 4,000~8,000円/㎡ |
壁の断熱工事 | 4,000~3万円/㎡ |
その他 | 床暖房:3~7万円/㎡薪(ペレット)ストーブ設置:30~60万円 |
古民家の断熱工事は、建物の構造や断熱材・設備のグレード、施工範囲によって費用が大きく変わるため、相場が幅広いです。
水回りの改修費用
水回りの改修工事は、古民家リノベーションにおいてもっとも多く施工されています。特に給排水管の劣化は雨漏りのリスクが高まるため、水回り設備の改修と一緒に配管を交換するケースも少なくありません。
水回りの改修費用の相場は以下の通りです。
工事内容 | 費用相場 |
キッチンの改修 | 50~150万円 |
トイレの改修 | 20~50万円 |
洗面所の改修 | 20~50万円 |
浴室の改修 | 100~150万円 |
給排水管の交換 | 給水管の交換:10~25万円排水管の交換:20~30万円給排水管の交換:25~50万円 |
配管を含めた水回り一式を改修する場合、費用は200~300万円ほどかかります。
バリアフリー化の費用
古民家はバリアフリーの概念がなかった頃に建てられた家のため、土間や玄関の入口などに高低差があるケースが多く見られます。生活上の不便を解消するため、バリアフリー化工事が行われる場合も少なくありません。
古民家のバリアフリー化工事の費用相場は以下の通りです。
工事内容 | 費用相場 |
玄関スロープの設置 | 15~20万円 |
土間解消 | 50~150万円 |
段差の解消 | 2~15万/箇所 |
ドアを引き戸に改修 | 30~50万円 |
廊下の幅拡張 | 30~150万円 |
手すりの設置 | 1,5~2万円/箇所 |
上記はあくまでも相場で、設置する場所や範囲によって費用が上下します。
古民家リノベーションの施工事例
実際の古民家リノベーションの施工事例を見てみましょう
Before
After
リノベーション箇所 | ・水回り(トイレ、洗面所)・内装(和室) |
費用 | 467万5,000円 |
キッチン、トイレ、洗面所の水回りと、和室の内装を中心にリノベーションを行いました。
設備以外に床材や壁紙も替え、全体的にモダンな雰囲気に生まれ変わりました。デザイン性の高い畳もポイントです。
古民家のリノベーション費用を抑えるポイントとして、以下が挙げられます。
- 既存の構造や素材を活用する
- 施工範囲を絞る
- 補助金制度を活用する
それぞれ見ていきましょう。
既存の建材や素材を活用する
古民家は築年数が経っているものの、柱や梁などに国産の丈夫な木材が使われているケースが多く見られます。これらの既存の建材や素材をうまく再利用すれば、古民家の魅力を残しつつリノベーション費用を抑えられます。
ただし、劣化が激しい建材・素材は、安全のためにも改修するようにしましょう。コストにとらわれず、どこまでが使えてどこからが使えないのか、線引きをしっかりすることが大切です。
施工範囲を絞る
古民家の全範囲をリノベーションしようとすると、費用がどうしても膨らみます。リノベーション費用を少しでも抑えるには、施工範囲を適切に絞ることが大切です。
限られた予算内で満足できるリノベーションをするには、プランニングの段階で施工箇所の優先順位をつけ、工事計画を立てることが大切です。例えば、毎日使うキッチンやトイレ、お風呂などの水回りは最優先だけど、使用頻度の少ない和室は内装工事のみに留めるなど、ライフスタイルに合わせて必要箇所のみを集中的に改修しましょう。
また、一度にすべてリノベーションするのではなく、段階的に変えていく方法もあります。まずは必要な部分だけをリノベーションし、将来年齢を重ねたり家族構成に変化があった際に残りの部分を改修することで、初期費用を抑えられます。
補助金制度を活用する
国や自治体が実施する補助金制度には、後述する古民家リノベーションに使えるものもあります。補助金の内容は省エネ化やバリアフリー化、空き家改修など多岐にわたります。
補助金の申請には条件があり、その内容は制度ごとに異なります。もし活用できればリノベーション費用の削減に大いに役に立つので、一度調べてみると良いでしょう。
古民家リノベーションに使える補助金制度
古民家リノベーションに活用できる補助金制度には、以下があります。
- 耐震補強の補助金
- バリアフリー化の補助金
- 省エネ化の補助金
- 自治体独自の補助金
- リフォーム減税(投資型)
1つずつ見ていきましょう。
耐震補強の補助金
自治体の中には、耐震補強工事に補助金を出しているところがあります。
例として、神奈川県川崎区と大阪府大阪狭山市の補助金制度を紹介します。
■川崎区の耐震補強補助金制度
制度名 | 住宅の耐震改修工事等の助成事業 |
申請条件 | ・建物が住宅であること・昭和56年5月31日以前に建築工事に着手したもの・木造2階建て以下のもの・木造在来工法のものなど |
助成金額 | 全体改修:工事費用の5分の4(上限85万円)一部改修:工事費用の3分の2(上限60万円) |
■大阪狭山市の耐震補強補助金制度
制度名 | 木造住宅耐震改修補助制度 |
申請条件 | ・大阪狭山市内で原則、 昭和56年5月31日以前 に建築確認を受けて建築された木造住宅であること・補助対象住宅の固定資産税を滞納していないことなど |
助成金額 | 工事費用の8割(上限80万円) |
対象となる住宅は昭和56年以前に建てられた旧耐震基準の建物なので、古民家は条件に当てはまります。古民家リノベーションに耐震補強工事はつきものなので、必ず自治体のホームページを確認してみましょう。
バリアフリー化の補助金
自治体によっては、バリアフリー化工事に独自の補助金を支給している場合があります。
例として、東京都調布市の補助金制度を見てみましょう。
■調布市のバリアフリー化工事補助金制度
制度名 | バリアフリー適応住宅改修補助 |
対象工事 | ・段差の解消・廊下及び出入口の幅の確保浴槽の交換又は改修(寸法の要件あり)・手すりの設置・和式便器から洋式便器への改修など |
申請条件 | ・調布市内にある個人住宅及び併用住宅であること・市税を滞納していないこと・対象住宅に6ヶ月以上居住していること |
助成金額 | 工事費用の2分の1(上限10万円) |
補助金の中には、65歳以上など年齢に条件がついているところもあります。事前によく確認しておきましょう。
省エネ化の補助金
国主導の補助金として、住まいの省エネ化工事に対する助成金制度があります。例えば環境省では、既存住宅の断熱化リフォームにおける補助金制度を実施しています。
制度名 | 既存住宅の断熱リフォーム支援事業 |
対象工事 | ・高性能建材(窓、ガラス、断熱材)を用いた断熱リフォーム(窓、床、壁、ドアなど)・家庭用蓄熱設備の設置リフォームなど |
助成金額 | 工事費用の3分の1(上限120万円) |
また国土交通省では、子育て世帯を対象にエコホーム支援事業を行っています。
制度名 | 子育てエコホーム支援事業 |
対象工事 | ・開口部の断熱改修・外壁、屋根・天井又は床の断熱改修・エコ住宅設備の設置など |
助成金額 | 上限20万円/戸(子育て世帯・若者夫婦世帯:上限30万//戸) |
断熱化の工事も古民家リフォームでよく行われるので、ぜひ活用したいところです。
自治体独自の補助金
自治体の中には、空き家の改修に補助金を支給しているところもあります。
埼玉県春日部市の例を見てみましょう。
■春日部市の補助金制度
制度名 | 空き家リノベーション助成制度 |
申請条件 | ・空き家を所有または購入し、住宅もしくは店舗の改修をすること・市区町村税を滞納していないこと |
助成金額 | 空き家バンク利用者:上限40万円上記以外:上限20万円 |
また、空き家に限らず、住宅リフォーム全般に補助金を支給している自治体もあります。どういった補助金制度があるか、お住まいの自治体のホームページを確認してみましょう。
リフォーム減税(投資型)
国土交通省では、耐震・バリアフリー・省エネ・長期優良認定・同居対応のいずれかのリフォームを行った場合、工事費用の10%が所得税額から控除される減税制度を実施しています。
制度名 | リフォーム減税(投資型) |
対象工事 | ・耐震工事・バリアフリー化工事・省エネ化工事・同居対応に向けた工事・長期優良住宅認定工事 |
控除率 | 耐震:62.5万円バリアフリー:60万円省エネ:62.5万円(太陽光発電搭載の場合 67.5万円)同居対応:62.5万円長期優良認定:62.5万円(耐震+省エネ+耐久性向上+太陽光発電の場合 80万円) |
最大控除金額 | 控除対象限度額の10%(控除対象限度額を超える分は5%) |
控除期間 | 1年間 |
補助金の支給とは少々異なりますが、コストを削減できる点は大きな魅力です。
予算に合わせて満足できる古民家リノベーションを
古民家リノベーションは、施工範囲や建物の状態によって費用が大きく変わります。予算内で古民家リノベーションを行うには、工事の優先順位を決める、既存の建材や素材を生かすといった方法が有効です。また、補助金制度を活用しても良いでしょう。
余裕のある資金計画やプランニングで、満足できる古民家リノベーションを行いましょう。